金属細線、金属ドットの作成にあたり、まず基板となるアルカリハライド、酸化物の自己組織化構造を作成する必要がある。今年度は特に金属、半導体上にアルカリハライドのナノ薄膜を成長させ、作成したナノ薄膜の構造、電子状態を明らかにする事を目的とした。現在までの所、以下のような成果を得た。 1.金属上のアルカリハライド薄膜の成長 すでに我々が報告したLiCl/Cu(001)以外でも、アルカリハライドが金属上に格子整合性が悪くとも層状エピタキシャル成長する事を明らかに出来た。特にLiCl/Cu(001)とは異なり、主軸を揃えて成長する系がある事が分かった。成長機構として、LiCl/Cu(001)とは異なった機構を考える必要があり、ステップからの成長が重要である事を提案した。 2.金属誘起ギャップ準位の観測 放射光実験をLiCl/Cu(001)について行い、界面に新しい金属誘起ギャップ状態が存在する事を明らかに出来た。さらに、この準位が表面垂直方向の方向性を持っている事も明らかに出来た。 3.混晶を用いたエピタキシャル条件の制御 複数の物質を混ぜた混晶では、格子定数がその組成比に従って変化する。アルカリハライド/半導体の場合、格子整合性が厳しく、NaCl/GaAsの系では格子misfitを0にするため基板温度を150度にする必要があった。室温でGaAsと同じ格子定数をとる混晶を作成し、成長させたところ、室温でGaAs上にエピタキシャル成長させることが分かった。すなわち、混晶という物を用いてエピタキシャル条件を制御できる事を示せた。
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