本年度はまず、二相反応により微細な金ナノ粒子の調製を行い、固相熱処理により金ナノ粒子の精密粒径制御を行った。具体的には、トルエン/水二相系にHAuCl_4・4H_2Oを添加し、相間移動触媒でAuCl_4^-をトルエン相に移動後、ドデカンチオール存在下でNaBH_4還元することにより1.5nm金ナノ粒子を調製した。溶媒留去後、固形物を150〜230℃にて熱処理することにより、粒径を揃えたまま金ナノ粒子を3.4〜6.8nmの範囲で精密に粒径制御することが可能であることが分かった。粒径は熱処理温度にほぼ一次の関係にあった。このようにして調製した金ナノ粒子の結晶構造を粉末X線回折、電子線回折および高分解能電子顕微鏡にて評価したところ、バルク金と同じfcc構造を有することが明らかとなった。これら超単分散金ナノ粒子トルエン溶液を平坦な炭素基板上に滴下・乾燥すると、溶媒乾燥時に粒子間に働く横毛管力により金ナノ粒子が二次元に最密充填した金ナノ粒子六方晶超格子が形成した。また、トルエンを溶媒として用いると、親水性基板上ではナノ粒子が凝集するが、疎水性基板上には二次元超格子が形成することが分かった。 次に、対称性が極めて低い金ナノ粒子平面一次元鎖の創製について検討した。金ナノ粒子平面一次元鎖を創製する場合、テンプレート法を用いるのが効果的である。そこで、NaCl(110)単結晶から作製したナノスケルの山谷構造を有する炭素基板(谷の深さおよび周期はそれぞれ数nm、20nm)をテンプレートとして用いることにより、熱処理にて粒径制御した金ナノ粒子平面一次元鎖列の創製を行った。まず、3.4nm金ナノ粒子トルエン溶液を基板に滴下すると、一次元鎖が数本集合したバンドル構造が多数観察された。そこで、金ナノ粒子溶液に基板を浸漬後、山方向と平行に基板を引き上げると、ナノ粒子が一列に並んだ一次元鎖列が観察され、大部分が基板の谷部に、一部が山部に配列していた。溶液からの基板引き上げ・溶媒乾燥時に粒子間に働く横毛管力および粒子の移流集積が、金ナノ粒子一次元鎖列の形成に寄与していると推察される。
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