研究概要 |
我々は,有機デバイス材料として期待される擬一次元導電性高分子であるポリペリナフタレン(PPN)の薄膜をペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)をターゲットとしたエキシマーレーザーアブレーション(ELA)法により作製している。この方法はPPN作製法として極めて有効な方法であるが,側鎖脱離効率が低いなど解決すべき点もある。そこで本研究ではPTCDAにCo粉末を混合させたターゲット(PTCDA/Co)のXeClエキシマーレーザーを用いたアブレーションにより効率的にPTCDAの側鎖基を解離させPPN薄膜を作製することを試みた。その結果、フルエンス1.0Jcm^<-2>以上で側鎖基が効果的に脱離したフラグメント種が生成することが分かった。これらの薄膜に対してラマン測定を行ったところ,Coを混合させることにより,側鎖基を効率的に脱離させると同時にペリレン骨格が保護されることが分かった。酸無水物基の脱離促進に対してCoがどのような働きをしているかについては検討中であるが、単なる熱的な効果だけでなくCo触媒効果が重要な働きをしており、本法をCat-ablation法と名づけた。PTCDA/Coをターゲットとして20℃で作製した薄膜の電導度は10^<-6>Scm^<-1>以下であった。そこで,薄膜作製後,真空を保ったまま基板温度を350℃まで上昇させ,30分アニーリングを行い再び20℃に戻した。その結果,20℃における電導度は10^<-3>Scm^<-1>のオーダーとなりアニーリング前と比べて2桁以上上昇した。これはペリレン骨格を保持しつつ側鎖が解離した活性種がアニーリングにより重合しPPNが形成されたためと考えられる。
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