高対称炭化水素であるコランニュレンおよびコロネンのモノアニオン状態についてESRを測定し超微細構造の分裂の温度依存性から、コランニュレンにおいては低温でJahn-Teller変形が観測されるのに対しコロネンでは観測されないことを見い出した。Jahn-Tellerポテンシャルのエネルギー障壁を見積もるとともに分子軌道計算を行うことによりコロネンの擬回転障壁がコランニュレンのそれよりも低く、実験を説明できた。これらの結果について群論的手法を用いて考察した(Chemical Physics誌)。これらの結果をさらに解析するため振電相互作用の非線形項の効果について系統的に検討し、2つの系について解析的ポテンシャル関数を導出した。また、障壁の大きさが異なることについて、選択則の存在を示唆した(Adv.Quant.Chem.誌)。Jahn-Teller分子であるC36H6のアニオンについてその構造を量子化学計算により検討し、この系においてはJahn-Teller効果よりも2次の振電相互作用による擬Jahn-Teller効果が大きい特異な系であることを群論により見い出した(投稿準備中)。Jahn-Teller系である高次フラーレンであるC74アニオンについてその振電相互作用を同じ対称性であるC36H6と比較検討した(投稿準備中)。金属内包フラーレンM@C74は、金属がケージの中心よりずれて円運動していることが実験的に分かっている。このことについて、分子軌道計算ならびに群論的手法を用いてその起源が振電相互作用にあることを明らかにし、金属を置換した系について中心からの変位や安定化エネルギー等の運動の金属による変化を系統的に検討した(投稿準備中)。
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