研究概要 |
1.「化学発光物質にホスト機能を導入し,ゲストを指令物質として化学発光を制御する」という新しい概念に基づき,外部指令感応型化学発光性色素の設計と発光操作に関する研究を行った. 2.化学発光性色素ロフィンペルオキシドをアザ-15-クラウン-5-エーテルで修飾し,ホスト機能を持つ化学発光物質を合成した.クラウン機能を持つ化学発光物質は今回初めて合成された. 3.このクラウン機能化ロフィンペルオキシド(化合物1)は塩基の添加により黄色の化学発光を示した.アルカリあるいはアルカリ土類金属イオンの存在下に化合物1の化学発光挙動を検討したところ,発光強度は金属イオンのない場合に比べて,ナトリウムイオン存在下で約150%,マグネシウムイオン存在下では70%程度で,金属イオンの指令に応答して化合物1の化学発光強度が変化することがわかった.化合物1の発光強度は,リチウム,カリウム,カルシウム,バリウムイオンにほとんど影響を受けず,ナトリウムとマグネシウムイオンに対して特異的に応答することを見いだした.また,化合物1の化学発光の発光極大はナトリウムイオンにより約50nm短波長へシフトすることも観測され,発光強度のみならず発光波長も指令物質により操作できる可能性を見いだした. 4.化合物1の発光反応における発光体としてジベンゾイルベンズアミジン誘導体(化合物2)を単離したが,化合物2は発光反応条件下で容易に加水分解生成物を与えるため,現在のところ発光体の蛍光特性を明らかにするには至っていない.化合物1の化学発光において指令物質応答性のメカニズム解明に重要な化合物2の蛍光特性に関して,14年度も引き続いて検討する予定である.
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