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2002 年度 実績報告書

次世代型光スイッチング材料の構築

研究課題

研究課題/領域番号 13740400
研究機関九州大学

研究代表者

速水 真也  九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (30321912)

キーワードスピンクロスオーバー / 鉄化合物 / コバルト化合物 / 光誘起スピン転移 / 光誘起原子価異性
研究概要

光誘起スピン転移(LIESST)化合物は、光スイッチング分子の一つとして知られている。このLIESST現象は鉄(II)化合物において観測されているが、鉄(III)あるいはコバルト(II)スピン転移錯体では、金属配位子間の結合距離やエネルギー障壁の差が小さいことから、LIESST現象を観測することは不可能とされてきた。この研究において強い分子間相互作用(π-πスタッキング)を導入することで、光スイッチングを実現させることを目指し実験を行った。鉄(III)錯体[Fe(pap)_2]ClO_4(Hpap=2-(2-Pyridylmethyleneamino)phenolは、温度に依存し低スピン状態Fe^<III>(t_<2g>^5e_g^0:S=1/2)【tautomer】高スピン状態Fe^<III>(t_<2g>^3e_g^2:S=5/2)間で熱的ヒステリシスを伴い急激なスピン転移挙動を示す。構造解析の結果からも、分子間で配位子がπ-πスタッキングを形成することが確かめられた。この鉄(III)錯体は、LMCTバンドに対応する550nmの光を5Kで照射すると、低スピン状態から準安定高スピン状態へとスピン転移し、現在まで不可能とされてきた鉄(III)錯体で初めて光誘起準安定高スピン状態を80Kまで安定にトラップすることに成功した。
また原子価異性(Valence tautomerism)を用いた光スイッチング分子の構築を目指し実験を行った。コバルト錯体[CO^<II>(SQ)_2(phen)](SQ=3,5-Di-tert-butylsemiquinon, phen=1,10-phenanthroline)の原子価異性は、高スピン状態CO^<II>(t_<2g>^5e_g^2:S=3/2)【tautomer】低スピン状態CO^<III>(t_<2g>^6e_g^0:S=0)間を配位子SQのラジカルが移動することにより熱的に転移し[CO^<III>(SQ)(Cat)(phen)](Cat=3,5-Di-tert-butylcatechol)となる現象である。5Kで低スピン状態[CO^<III>(SQ)(Cat)(phen)]に550nmの光を照射すると、高スピン状態[Co^<II>(SQ)_2(phen)]を長時間トラップすることができ、新たな光スイッチング分子の開発に成功した。

  • 研究成果

    (6件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (6件)

  • [文献書誌] S.Hayami et al.: "A Novel LIESST Iron(II)Complex Exhibiting a High Relaxation Temperature"Inorg.Chem.. 40. 3240-3242 (2001)

  • [文献書誌] O.Sato et al.: "Photo-Induced Long-Lived Intramolecular Electron Transfer in a Co Valence Tautomeric Complex"Chem.Lett.. 874-875 (2001)

  • [文献書誌] S.Hayami et al.: "Iron(III)Spin-Crossover Compounds with a Wide Apparent Thermal Hysteresis at around Room Temperature"J.Am.Chem.Soc.. 123. 11644-11650 (2001)

  • [文献書誌] S.Hayami et al.: "Pressure-Stabilized Low-Spin State for Binuclear Iron(III)Spin-Crossover Compounds"Bull.Chem.Soc.Jpn.. 74. 2361-2368 (2001)

  • [文献書誌] O.Sato et al.: "Photo-induced Reverse Valence Tautomerism in a Metastable Co Compound"Chem.Phys.Lett.. 355. 169-174 (2002)

  • [文献書誌] G.Juhasz et al.: "Photo-Induced Spin Transition for Iron(III)Compounds with π-πInteractions"Chem.Phys.Lett.. 364. 164-170 (2002)

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公開日: 2004-04-07   更新日: 2016-04-21  

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