筆者らは、3d遷移金属錯体の金属L殻吸収スペクトルに現れる特徴的な配位子への電荷移動を伴うバンド(MLCTバンド)の起源について、これまで理論・実験両面から明らかにしてきた。その成果をまとめて出版した(文献1)。 本課題ではこれらのMLCTバンドに共鳴したときの共鳴発光分光を行い、内殻励起と発光を伴う脱励起について調べることが主目的であった。平成13年度はスウェーデン国立Max-Labにてニッケルジメチルグリオキシムの共鳴発光実験を行った。高分解能スペクトルを測定することに成功し、またラマンテンソルの異方性に関する情報も得ることができた。その結果、MLCTバンドに共鳴することにより、一電子的な終状態のみが発光スペクトルに強調されて観測されることが明らかとなった。その結果は、分子構造討論会で発表した。現在、理論計算をおこない、実験結果の定量的な解釈を行っており、まとまり次第論文として公表する予定である。
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