研究概要 |
当研究グループでは,高分子薄膜をキャスト法によって作製するプロセスによりハニカム等の周期構造がサブマイクロスケールで簡便に作製できることを既に報告している.このハニカム構造はフォトニック結晶に代表される新規光機能材料へ応用できると考えられる.第一段階として,ハニカムの空洞部分に微粒子を埋め込むことで高効率発光素子ができると考え,ユーロピウム(III)(以下Eu)およびテルビウム(III)(以下Tb)錯体を導入した発光性の単分散微粒子作製を検討した.希土類金属イオンは有機発光体と比較して発光バンドが強くかつその半値幅が狭いという特性を有し,かつ化学的に比較的安定であるため,広範な分野で既に用いられている.なお,希土類金属を含む高発光性ナノ材料の系統的作製研究は過去報告例がほとんど無い. 微粒子作製法であるが,まず重合部位を有する脂溶性希土類錯体モノマーを合成し,これをスチレン等の脂溶性モノマーと混合後,ラジカル分散共重合する方法を採用した.得られた微粒子の粒径分布等の形状観察を光学顕微鏡および走査電子顕微鏡で行った.サブマイクロからマイクロスケール径の微粒子を得ることができた.希土類錯体とポリスチレンなどのマトリックスポリマーとの組み合わせを検討することで,ほぼ球状の単分散性ポリマー粒子を得ることができた.また,紫外光で励起することでほぼ全ての微粒子から発光していることが蛍光顕微鏡により観察された.微粒子のガラス基板上での発光スペクトルは,対応する希土類錯体の希薄ベンゼン溶液での発光スペクトルとほぼ一致した.すなわち,EuおよびTb錯体に由来する約10nmという狭い半値幅の発光特性を各微粒子に導入できたことが分かった. 以上まとめると,Eu・Tbイオンの発光特性を導入した微粒子の作製に成功し,これら粒子の作製法としてボトムアップに該当する本手法が有効であることを示すことができた.今後,他の希土類金属への応用および周期構造への微粒子組み込みを検討する予定である.
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