研究概要 |
多座配位子の化学構造が錯形成による金属イオンセンシング機能発現に及ぼす効果を包括的に評価し、これを新規センシング試薬の分子設計に利用することを目的として、溶媒抽出法を中心に用い、以下のような基礎的研究を行った。 [1]各種のピリジン-2-カルボニル化合物とジアミン類とから合成される無電荷Schiff塩基を錯形成試薬に用いて、2価遷移金属イオンのイオン対抽出選択性に及ぼすイミン窒素ドナー原子近傍の化学構造の効果について比較検討を行った。その結果、2つのイミン窒素原子間の架橋構造が抽出選択性に大きな影響を及ぼし、この元素間距離が短いものほど高いイオンセンシング機能を見いだすことが確かめられた。また、置換基の導入位置の違いにより、センシング機能に影響を与える場合と錯体安定度にのみ寄与する場合があるということも見いだされた。 [2]三脚型3価四座配位子であるトリス(2-ヒドロキシ-3, 5-二置換ベンジル)アミンを用いる13族3価金属イオンのキレート抽出に関する検討を行い、錯体の結晶構造解析結果との相関から、中程度の大きさを有するガリウムイオンのみが三脚構造との適合性により選択的に認識されるということを見いだした。 [3]芳香族アミンの窒素原子に各種アリールスルホニル基を結合させてスルホンアミド型とした構造を有する新奇な二座及び四座配位子を設計し、2価遷移金属イオンのキレート抽出試薬としての機能を評価した結果、これらが同一骨格のフェノール型配位子と比較して亜鉛イオンに対する高いセンシング機能を示すことが見いだされた。
|