トラフショウジョウバエの重複アミラーゼ遺伝子の発現を制御するシスエレメントを同定するためにキイロショウジョウバエでP因子仲介形質転換法用いて、アミラーゼ遺伝子のデリーションミュータントをもつトランスジェニックフライを作製した。ひきつづきトランスジェニックフライ作製を行い発現調節に関わるシスエレメントを絞り込む予定である。トラフショウジョウバエの重複アミラーゼ遺伝子における種内変異の解析を行った。自然集団由来の24系統について重複アミラーゼ遺伝子の5'上流およびコーディング領域をPCRで増幅後、塩基配列を決定した。決定した塩基配列に基づき集団遺伝学的解析を行ったところ、異なる染色体上の同じ遺伝子座間の組み換え率は、同じ染色体上の異なる遺伝子座間の組み換え率より一桁高いことがわかった。その結果、コーディング領域において重複遺伝子は協調的に進化している一方で、重複遺伝子間ではそれぞれが多様化する傾向にあることがわかった。また、重複アミラーゼ遺伝子のうちの一方の5'上流領域にのみ塩基サイト間の有意な連鎖不平衡が見つかった。その領域はアミラーゼ遺伝子発現を制御するシスエレメントを含むと考えられ、有意な連鎖不平衡は塩基サイト間の相互作用の結果であることが示唆された。この結果は、今後の分子生物学的手法を用いる実験の指針となることが期待される。
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