研究概要 |
雄の派手な形質を指漂とした雌の配偶者選択において,選ばれた雄からの子への遺伝的貢献という間接的利益を明らかにするため,沖縄産野生化グッピーを用いて以下のような一連の実験を行った。 まず,グッピーにおいて雌選択の指標である雄のオレンジ色の体色が,餌の藻類に含まれるカロチノイド依存形質であること,および藻類摂餌による成長等への影響を検証するため,同じ両親由来の一腹の子を2グループに分け,一方には緑藻,またはβカロチンを含んだ餌を与え,もう一方にはコントロールとして藻やカロチンを含まない餌を与えて飼育した。その結果,藻類を与えたグループでは雄のオレンジ色の体色が鮮やかになったばかりでなく,雌雄ともに成長が早くなり,雌の繁殖開始時期も早くなった。βカロチンを与えたグループでは,雄のオレンジ色の体色は鮮やかになったが,雌雄の成長や雌の繁殖開始時期はコントロールグループと差がなかった。これらの結果から,グッピーの雄におけるオレンジ色の体色は藻類に含まれるカロチノイドによって鮮やかになることから,オレンジ色の鮮やかな雄は藻類採餌能力が高いこと,また藻類摂取によって雌雄の成長や繁殖が向上するが,これらの影響は藻類に含まれるカロチノイド以外の物質が関与している可能性があることが示唆された。 さらに,藻類に対する摂餌能力が親から子へと遺伝するかを明らかにするため,障壁を越えて藻類を探索する能力を調べる迷路実験などを行った。まず,成熟した雌雄の藻類摂餌能力を調査した後,それらの子を得,親と同様の実験を行い,親と子における藻類摂餌能力の相関関係を解析した。その結果,藻類摂餌能力は雌親から子へは有意に遺伝していたが,雄親から子へは遺伝する傾向が見られたが有意な結果とはならなかった。これはサンプルサイズが小さかったためと考えられることから,今後さらに実験例数を増やして再解析する予定である。
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