(実験について)同所的に生息する生息するヤマトアザミテントウとルイヨウマダラテントウの個体群について、量的遺伝学的な手法を用いて、寄主植物に対する選好性と植物の利用能力について解析を行った。両種間での交雑を妨げている要因と考えられる食草について、寄主範囲がどのように決定されているかを調べ、食草の違いがどの程度有効に生殖的隔離機構として働いているかを研究した。その結果、(1)発育期間と体サイズに現れる両種の生態的特徴から、各々の食草に対する生態的な適応がみられた。このことは、両種は各々の食草に適応した別々の集団に分化したという可能性を示す。(2)両種の幼虫を逆の食草で飼育すると、著しく生存率が低下した。このことは野外においても、両種間の交雑が殆ど行われていないことを示している。(3)ヤマトアザミテントウのルイヨウボタンに対する選好性の遺伝的変異はある程度検出されたが、ルイヨウマダラテントウは厳密にルイヨウボタンを選択し、アザミに対する摂食反応はみられなかった。このことが(2)の交雑の低さの原因と考察された。また、両種の寄主範囲拡大の可能性は低いが、拡大するとすれば、ヤマトアザミテントウがルイヨウポタンを利用するという方向性が示唆された。これらの結果は、生殖的隔離機構として食草への選好性が効果的に作用していることを示している。 (発表について)デンマークで開催された11th International Symposium on Insect-Plant Relationshipsに参加し、オオニジュウヤホシテントウ群の寄主範囲進化に関する発表を行った。
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