本年度はチモール島および沖縄本島にて調査を行なった。 チモール島では乾期の8月に再度サンプリングを行なった。これまでの結果とあわせて、チモール島山間部の竹の切り株には、Ochlerotatus notoscriptusが優占種として卓越していることが明らかになった。2番目に優占するAedes albopictusに比べると、冠水後の成長が遅いことは佐賀で優占する、Tripteroides bambusaと共通する性質であるが、飢餓耐性が低いことはこの種の特徴といえる。水の安定な切り株でO.notoscriptusが優占していたのは、餌をめぐる競争において優位であったためではないことが示唆される。また、2回の乾期の調査と1回の雨季の調査をあわせると、Ae.albopictusの蛹化率は乾期に高く雨期に低いのに対して、O. notoscriptusの蛹化率はいずれの時期も比較的低い値を示した。このことは乾期の一時的な水溜りをAe.albopictusがより有効に利用できていることを示唆し、両種の共存機構を考察する手がかりとなる。これらの結果は2002年10月の日本衛生動物学会南日本支部大会で発表した。 沖縄本島では3月、7月、10月にサンプリングを行った。他の地域で優占するTripteroides属が分布しない点が本調査地の特徴であるが、水を長期間溜めていたと思われる竹の切り株ではAedes属と、Uranotaenia属が優占することが明らかになり、チモール島と同様に、佐賀とは別のグループによって似たようなニッチ分割が生じていることが示唆された。沖縄では細い竹がほとんどだが、より大きな生息場所である樹洞や人工容器にはOrthopodomyia属が優先する傾向が見られ、生息場所のサイズに基づくニッチ分割の可能性も示唆された。
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