日本産シロイヌナズナ属(Arabidopsis)野生種ハクサンハタザオ(A. gemmifera)、ミヤマハタザオ(A. lyrata)の各地の野生集団より種子を採取し、日長と温度をコントロールした制御環境下(ファイトトロンを使用)での栽培実験を行い、生活史形質(開花までの日数・繁殖サイズ・種子繁殖と栄養成長への資源分配・種子生産など)における表現型可塑性を解析した。ハクサンハタザオの種子は宮城、三重、滋賀、京都の野生集団より採取した。ミヤマハタザオのうちタチスズシロソウと呼ばれる変種の種子を琵琶湖岸および伊勢湾岸の集団より採取した。ハクサンハタザオの宮城集団ではとくに詳細なフェノロジー調査を行った。その結果野外における開花結実のスケジュールと、結実後に引き続き花序の先端において新苗の形成がおこることが明らかとなった。また、新苗形成時に新苗の着地前に発根する事が明らかとなった。今年度はハクサンハタザオを中心に栽培実験を行い、どの集団においても開花に低温と長日条件を要求する事が明らかになった。一方、結実引き続く花序先端での新苗形成には、特に外部から環境シグナルを要求しないことが明らかとなった。新苗形成は開花開始後、短日条件に置かれても長日条件に置かれても同様におこる。また、野外では結実率が比較的高いのに対して、栽培条件下ではほとんど種子ができず、自家不和合性がある事が示唆された。
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