研究概要 |
摂食活動や消化管内容物の存在がSCPにおよぼす影響を明らかにするために、寒冷地(東北)と西南暖地(九州)のオオヒメグモ越冬幼生を材料に、自然条件下でめ摂食状況とSCPの関連を調査した。SCPは寒冷地の集団で低く(平均-18,9℃)、西南暖地の集団で高かった(-10.9℃)。寒冷地では冬季に捕食活動はまったく観察されなかったのに対し、西南暖地でゆわずかながら捕食が観察されたこのことは、摂食活動とSCPの間に密接な関連があることを示唆している。摂食活動にみられた地理的な違いは、餌となる虫の活動性の違いにのみ起因しているわけではなかった。採集したクモを実験室(25℃)にもちかえり餌虫(コオロギなど)を与えたところ、寒冷地の集団は西南暖地の集団にくらべ餌虫に対する攻撃性が弱い傾向がみられた。はたして、この違いが遺伝的な違いによるものなのか、それとも貯蔵栄養(脂質など)の蓄積量の違いによるものなのか、現在検討中である。 休眠、絶食および低温処理などがクモのSCPに及ぼす影響を明らかにするために、異なる光周期(16Lと12L:短日条件は幼生休眠を誘導する)および温度条件(25℃と5℃)下で絶食実験を行なった。SCPは休眠に入ったか否か、低温を経験したか否かに関わりなく、絶食すると低下したこのことは休眠それじたいはSCPの低下に直接的には関わっていないことを示している。ただし、休眠が誘導されない25℃長日条件下では40%近くのクモが餓死したことから、休眠は貯蔵栄養を蓄積することで絶食にともなう餓死の危険を回避し、結果としてSCPの低下に関わっていることが示唆された。
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