本研究の目的は、クロロフィルb生合成による光化学系アンテナサイズの調節機構を明らかにすることにある。高等植物のクロロフィルb合成は、クロロフィルaオキシゲナーゼ(CAO)によって触媒されることが明らかになっている。 申請者は、さまざまな光強度(100μmol photons/m-2 s-1から1200μmol photons/m-2 s-1)のもとで、高等植物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を育て、CAO遺伝子の発現と、アンテナサイズ(指標としてクロロフィルa/b比を用いた)を比較した。すると、光強度が大きくなるに連れて、CAO遺伝子の発現が減り、アンテナサイズも減少することがわかった。また、最初に、強い光条件(1200μmol photons/m-2 s-1)に適応させたシロイヌナズナを急に弱い光条件(100μmol photons/m-2 s-1)に移すと、CAO遺伝子の発現の増加とアンテナサイズの増加が同時に見られた。また、逆に弱い光条件(100μmol photons/m-2 s-1)に適応させたシロイヌナズナを急に強い光条件(1200μmol photons/m-2 s-1)に移すと、逆にCAO遺伝子の発現の現象とアンテナサイズの減少が同時に見られた。CAO遺伝子を過剰に発現する形質転換株では、どちらの光条件においても、アンテナサイズの変化は見られず、常に、アンテナサイズは大きいままであった。これらの結果によって、CAO遺伝子の発現がアンテナサイズの調節に中心的な働きを果たしていることが明らかになった。
|