生物の有性生殖過程における2個の配偶子細胞間の情報交換、認識とそれに基づく両細胞の融合(受精)は、生物の生存をかけた基本的かつ根本的な事象であるにも拘わらず、この機構の解明は大きく立ち後れている。本研究では、これまでの一連の研究で得たミカヅキモの有性生殖に関わる性フェロモン遺伝子を中心に、これらの分子が有性生殖時にどのように協調的に発現制御され、実際の機能に結びつくのかを検討することを目的としている。今年度は、以下のような解析を行った。 (1)性フェロモンPR-IP inducerをコードする遺伝子の酵母細胞内での発現 ミカヅキモからのPR-IP inducerの分泌量は極めて微量であり、その作用機構を検討することはこれまで不可能であった。そこで単離したPR-IP inducer遺伝子を酵母シャトルベクター(YEpFLAG-1)に組み込み、酵母細胞に導入し、性フェロモン(PR-IP)誘導能を示す組み換え型PR-IP inducerを得ることに成功した。また遺伝子の一部分を欠損させたものでは、PR-IP誘導能が見られず、生理活性発現にはタンパク質全体を必要とすることが明らかになった。 (2)有性生殖特異的に発現する遺伝子の解析 有性生殖の各段階にあるミカヅキモ細胞からmRNAを抽出し、それらをもとにcDNAライブラリーを構築した。さらに、それらの平均化を行い、有性生殖期に発現している遺伝子群について情報を得た。
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