研究概要 |
マングローブ植物の一種であるBruguiera sexanglaからcDNAライブラリーを作成し、これを大腸菌に導入して得られた大腸菌の耐塩性を評価した。その結果、256アミノ酸からなるタンパク質をコードするcDNAが導入された大腸菌に耐塩性の向上が認められている。また、このタンパク質を発現した酵母、タバコ(カルス、植物体)の耐塩性が向上することも既に明らかになっている。しかしながら、その耐塩性向上のメカニズムは未だ不明である。そこで、今年度はこのタンパク質をコードするcDNAのデリーションクローンを作成し、機能領域の検討を試みた。その結果、N末端領域の71アミノ酸からなるB.sexangula特有の配列(mangrin motif)に耐塩性の向上活性が認められた。次に、mangrin motif cDNAに対し、Error-prone PCR、及びDNA shufflingを行うことでランダムな変異を導入し、その中から耐塩性向上活性に変化が生じた変異cDNAの探索を試みた。100,000以上の独立クローンを含む変異mangrin motif cDNAライブラリーを構築し、これを全て大腸菌に導入して、耐塩性に変化が生じた形質転換体を選抜した。ここから得られたプラスミドの全塩基配列を解析した結果、ほとんどのcDNAに数箇所のランダムな変異が導入されていることが明らかになった。これらのうち、フレームシフトが生じていない変異cDNAを検索した結果、耐塩性向上活性が低下したものが3クローン、向上したものが12クローン得られた。これらの変異cDNAがコードするタンパク質は全て1から3アミノ酸に変異が生じていた。このことから、mangrin motifの立体構造がその耐塩性強化機能に対し、何らかの役割を担っていると考えられた。
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