イネは典型的な短日植物である。極端な長日条件である連続明期中では、播種後、200日でも開花しない。我々は、これまでに、連続明期中でも、播種後約20日で、花芽形成を起こすse5変異体の解析から、イネの光周性反応に、植物光受容体フィトクロームが必須であることを明らかにしている(Izawa et al. 2000)。 1)本研究では、lucレポーター遺伝子を用い、概日時計のモニター系を確立した(Sugiyama et al. 2001)。 2)また、hd1変異体を用いた解析から、Hd1遺伝子が概日時計の出力系として開花を制御していること、イネにはFT様遺伝子が10個以上存在し、多くは、フィトクロームを介した光信号伝達系とHd1遺伝子を介した概日時計出力系の相互作用により、発現制御され、短日条件のみで発現することを見いだし、概日時計に発現制御され「夜」に存在するHd1タンパク質が、フィトクロームを介した修飾の結果、日長条件により転写促進型になったり、転写抑制型になることで、日長測定をしているというモデルを提唱している(井澤ら、投稿準備中)。 3)さらに、イネFT相同性遺伝子の過剰発現により、茎の先端にたった一個の花(小穂)ができる植物体を作成することに成功した。このことは、FT相同性遺伝子の機能が花芽形成のスイッチとしてだけではなく、生殖期間の長さの決定にも関与していることを示している(井澤ら、投稿準備中)。
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