オーキシンを介した根の形態形成の分子機構を解明する目的で、シロイヌナズナから単離したオーキシン耐性を示す側根欠失変異体solitary-root (slr)とその原因遺伝子IAA14の解析を主に行ない、以下の成果を得た(1、2の成果はThe Plant Journal誌に論文発表した)。 1、レポーター遺伝子(IAA14遺伝子上流プロモーター配列の下流にGUSおよびGFPを繋いだキメラ遺伝子)を用いてIAA14遺伝子の発現解析を行ない、IAA14が根の先端部では表皮で、側根形成領域では維管束組織で発現していることを明らかにした。 2、IAA14とGFPを融合させたタンパク質を発現する植物を作出し、IAA14タンパク質の細胞内局在を調べた。その結果、野生型IAA14-GFPタンパク質の蓄積はほとんど確認されず不安定だが、変異型IAA14-GFPタンパク質は安定に核に局在することから、slr変異によりIAA14タンパク質が安定化することを明らかにした。 3、側根形成においてSLR/IAA14と遺伝的に相互作用する遺伝子座を同定する目的で、slr変異体の側根欠失表現型を抑圧するサプレッサ-変異体の単離を試み、IAA14以外の遺伝子座に変異を持つサプレッサ-変異体suppressor of slr 1(ssl)、ssl2、ssl3を新たに単離した。これらssl slr二重変異体では側根形成のみが回復し、他のslrの表現型(根毛形成異常・重力屈性異常)が回復しないことから、SSL遺伝子群は側根形成特異的にSLR/IAA14と遺伝的に相互作用すると考えられる。 4、マップベースクローニングによりSSL2遺伝子の同定に成功し、SWI2/SNF2型クロマチンリモデリング因子CHDファミリーに属するPICKLE/GYMNOSと同一産物をコードすることを発見した。
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