トロポニンC(TnC)スーパーファミリー遺伝子は、基本的に5つのイントロンを持ち、内4つの挿入位置は分子種間でも保存されている。一方で第4イントロンのみは、分子種間・内で挿入位置の相違が頻繁に観察される。これに対し湯浅は、これまで主にTnCの遺伝子構造の比較から「ファミリーの共通祖先遺伝子には第4イントロンは存在せず、各分子種の進化過程で独立に獲得されてきた為」との仮説を提唱してきた。この仮説が正しいとすれば、ファミリーに属するTnC以外の分子種においても系統樹の根に近い位置で第4イントロンの不在が認められる事が予想される。そこで本研究では海綿動物(クロイソカイメン)及び刺胞動物(ヒダベリイソギンチャク)からカルモジュリン(CaM)遺伝子を単離、その遺伝子構造を決定した。カイメン、イソギンチャクのCaM共に、脊索動物CaMの第4イントロンに相当するイントロンが見出されず、この事は第4イントロンは後生動物の祖先のCaMには存在せず、無脊椎動物と脊索動物の分岐後に脊索動物の系統でのみ獲得された事を示唆する。これは上記のTnCスーパーファミリー遺伝子の進化仮説に合致する。以上の結果はGene誌に発表された。 この他に棘皮動物(エゾバフンウニ)において、選択的スプライシングを行う特殊なCaM遺伝子を同定、現在その遺伝子構造の決定に着手している。またカイメンにおいて、哺乳類カルシフォシン・ホモログと考えられる遺伝子を単離、その遺伝子解析も行っている。
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