1.不動化キンギョにおける心拍を指標とした情動性条件付け手法の向上のため、発光ダイオードの点灯を条件刺激とし、体表への電撃を無条件刺激とした恐怖条件付けを行い、徐脈反応を条件反応の指標として諸条件を検討した。その結果、条件刺激は5秒から10秒、試行間隔は50秒から100秒とすることで、安定した条件付けを起こすことが可能であることが分かった。さらに、キンギョにとっては新奇な刺激である発光ダイオードの点灯に対する馴化とその条件を確定した。 2.小脳体の全除去が上記条件付けに及ぼす影響を検討したところ、小脳体の大部分を除去した個体においては、条件刺激の受容、及び心拍調節機能には障害が認められないにもかかわらず、条件付けが著しく阻害されることが明らかとなった。このことは、古典的な恐怖条件付け過程において、小脳体がその成立に関与していることを示唆する。また、小脳体の大部分を除去した個体においても、わずかながら条件付けが進行することから、小脳弁あるいは他の領域の補助的関与も示唆された。 3.上記結果に基づき、小脳体の微小領域の除去によって、条件付けに関わる領域の特定を試みた。局所除去には、当初予定していた通電もしくは化学的破壊ではなく、局所吸引法を用いた。その理由は、現段階ではより確実な除去を行うことが重要と判断されたためである。上記検討の結果、小脳体のある特定の領域が条件付け過程に関わるというよりも、除去量による影響の方が大きいと考えられた。このことは、条件付けに関わる神経機能は、小脳に分散的に配分されていることを示唆している。
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