日本産のニッポンソゾ、ウラソゾ、ミツデソゾ、エンシュウソゾ、ハネソゾ、マギレソゾ、クロソゾ、および欧州産Osmundea hybridaの培養藻体を材料に用い、これら8種についてrbcL遺伝子のDNA塩基配列を決定した。広義のソゾ属Laurenciaを2属に分割する見解に従うならば、用いた日本産ソゾ類7種の内訳は、形態的特徴から前6者は狭義のLaurencia属、後1者はChondrophycus属とされるものである。 これら今回得られた塩基配列データに、すでにデータベース上に公開されている欧州産Osmundea属5種の塩基配列データを加え、分子系統樹を作製した。外群としては、同じくデータベース上に公開されているChondria dasyphyllaとRhodomela confervoidesの塩基配列データを用いた。 この結果、Osmundeaおよび狭義のLaurenciaとChondrophycusの3者は、それぞれ独立したクレードを形成し、中軸細胞の形態的特徴に基づきこれら3者を独立した属として扱うべきという近年の見解を支持する系統樹が構築された。また、この系統樹では、狭義のLaurencia6種は、ハネソゾとマギレソゾの2種および、それ以外の4種からなる、2つの独立したクレードに分かれる結果となった。このことは、ソゾ属(広義)の種分類に際して伝統的に重視されてきた幾つかの形態的特徴のうち、軸の横断面の形状は種レベルよりも高い系統を反映する特徴とは言えないこと、および、基部の形状は種レベルよりも高い系統関係、すなわち節もしくは亜属レベルの系統を反映する重要な特徴である可能性があることを示唆している。
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