動物との共進化を強く類推させながら形質の多様化の理由が不明である葉上器官「ダニ室」について、クスノキ科植物を材料に研究を行った。 クスノキについては、ダニ室の違いの至近要因を明らかにする研究を行った。滋賀と名古屋のクスノキ約260枚の葉から約1000個のダニ室を観察し、それぞれの入口と内部の短径・長径を測定し、それらのダニ室の位置、他の形質(入口の毛の有無)との相関を調べた。その結果、ダニ室の形は葉のどこにできるかによって偏り、位置によって毛の有無の形質も変わることが明らかになった。 次に形の違うダニ室における形態形成の違いを明らかにするため、クスノキの葉を発達段階ごとに観察した。その結果、ダニ室は葉の発達のかなり初期の段階から形成され始めるが、形の違うダニ室は、発達にかかる時間が異なることを発見した。また、入口部分が狭くなるダニ室では、入口部分の細胞が初期の段階から厚く発達し、最終的に他の形のダニ室よりその部分の細胞の数とサイズが増大することがわかった。 オコテア属については、マダガスカル島で数種の葉を採集した。その中にはダニ室を作らない種、葉脈脇に毛を生やす種、葉脈脇だけ毛ができない種、ダニ室入口に丸い穴を開ける種、入口がスリットのように細い種などが含まれる。これらの種の生態的な違いは、後者二種がやや高い標高に分布する以外、大きな違いは見つからなかった。中にいるダニについては、主に肉食性のダニが見られるが全体的にダニの数は少ない傾向が見られた。これらの種の系統解析については、ダニ室を持つ種の種数をさらに増やした後、解析する予定である。 以上の結果については、日本植物分類学会で発表を行ったほか、現在論文を執筆中である。
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