研究概要 |
平成13年度においては、ヒトのRH遺伝子領域について、血清学的タイピング、ポリメラーゼ連鎖反応法を利用したDNAタイピングをおこなった個体を、fiber-FISH法によって解析した。その結果、通常、Rh(+)個体では2個のRH遺伝子(RHCE, RHD)が第1番染色体p36.1上に近接して互いに逆向きに配列しており、Rh(-)個体では、RHD遺伝子が完全欠失していることを見出した。さらに検査個体数を増やして様々なゲノム再配列を見出し、これによって複数の例でRHD遺伝子は有するものの発現異常が生じてRh(-)となったものを明らかにした。こうして、この領域が変化と多様性に富むことを示すとともに、日本人、韓国人、南アフリカ共和国黒人について調べて人種差も見出した。 以上のヒトにおける知見に基づき、本年度はチンパンジーを中心とする大型類人猿(ボノボ、ゴリラ、オランウータンを含む)のRH遺伝子領域をfiber-FISH法によって解析した。その結果、これら大型類人猿では、ヒトと対応する染色体領域にRH遺伝子がマップされ、さらに、個体によって1個または複数個のRH遺伝子をホモ接合またはヘテロ接合で有することが明らかとなり、これまで調べた範囲で、ヒトではまだ見出されていない遺伝子構成や遺伝子間距離を示す個体が見出された(論文投稿中)。このことから、進化の過程で、RH遺伝子領域は遺伝子重複を生じやすい領域であることが明らかとなった。
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