研究概要 |
本研究では、霊長類のどのような3者が互いに身体を接触させて三角形に位置するかを記録し、3者の揃いやすさに影響する要因を解析して、3者の相性を考察しようとした。 チベットモンキー(Macaca thibetana)やニホンザル(Macaca fuscata)などの霊長類は特に寒冷時の泊り場などでは暖をとるために何頭かが互いに身体を接触させて「さるだんご」と呼ばれるかたまりを形成する。チベットモンキーにおいて、3者の揃いやすさを、さるだんごでの身体接触頻度及び日中の社会交渉における親密さから予想される各2者のくっつきやすさと比較した結果、以下の(1)(2)が示唆された。(1)3者中の各2者がいずれもくっつきやすい3者は揃う頻度が高くなる。(2)交尾期には発情メスを巡るオス間の競合が高いため、オスとオスがくっつくことは少なくないにもかかわらず、オス-オス-メスが揃う頻度は低くなる(Ogawa, H. Takahashi, H. Triadic positions of Tibetan macaques huddling at sleeping sites.投稿中)。 また本年度は「嵐山モンキーパークいわたやま」でニホンザルの野外調査を実施した。ニホンザルでは3者によるさるだんごは母とその子どもたちという組合せが多かった。チベットモンキーの調査ではサルの体の向きを記録しなかったので、今回は体の向きを含めて記録した。3者によるさるだんごは列になる場合と3者が互いに接触して三角形になる場合があるが、体の向きによって更に幾つかのパターンに分類できた。これらの結果は2001年の日本動物行動学会で発表し、分析を継続中である。 霊長類における上記の発見は、「円滑な人間関係を形成させて行くためにどのようなグルーピングを作っていくか」という問題にヒントを与える発想にもつながると期待される。
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