磁気アルキメデス効果を用いた浮遊溶融帯域結晶育成法に関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13750003
• 研究種目: 奨励研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 廣田 憲之 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助手 (10302770)
• キーワード: 強磁場 / 磁気アルキメデス効果 / 冷凍機冷却型超伝導磁石 / 浮遊溶融帯域法 / 一方向溶融凝固

研究概要

本研究では、磁気アルキメデス効果を利用して、浮遊溶融帯域法の適用が困難な物質の結晶成長を可能にする手法を開発し、高品質の結晶成長を目指すとともに、結晶成長過程への強磁場印加の影響を評価する事を目的としている。まず、平成13年度は、強磁場中浮遊溶融帯域法結晶成長システムを試作し、これを用いて、比較的容易に結晶育成が可能とされるBi系超伝導体を対象として一方向溶融凝固過程を行なうことで、システムの動作検証、各種運転条件の最適化を図る事を目的とした。冷凍機冷却型超伝導磁石の室温ボア中で用いる事を考慮し、本研究では高周波加熱方式を採用した。高周波電源は、導電率が低い物質にも適応する既有の高出力タイプのものを使用した。ボア内部には水冷機構付きのチャンバーを組み込み、5気圧までの高酸素圧に耐えうる空間を作製した。ここに試料搬送機構、高周波コイルを組み込み、強磁場中浮遊溶融帯域法結晶成長システムを構築した。また、本装置を用いて、アルミナ管中に入れられたBi系酸化物超伝導体の一方向溶融凝固過程を行い、磁場印加の有無による溶融凝固体組織への影響をX線回折、磁化測定を行うことで評価した。通常、Bi系酸化物超伝導体の溶融凝固を一方向に移動させながら行なうと、c軸が移動方向に垂直に成長が起こるのに対して、磁場を結晶の移動方向に平行に印加すると、結晶の磁気的異方性のために、ある条件下ではc軸と移動方向が平行になった凝固体が得られた。材料製造において望ましい結晶方向性を有した材料を作る事は極めて有用であるため、このような磁場による方向性の制御は有益であると考えられる。今後は、装置面では溶融帯域の目視観測機構を改良し、いくつかの物質で雰囲気制御を行った溶融凝固過程を行い、磁気アルキメデス効果の影響や磁場印加の影響に関して評価したいと考えている。

研究成果

• [文献書誌] 廣田憲之, 池添泰弘, 植竹宏往, 開発徹, 北沢宏一: "種々の物理化学過程への磁場影響"Proceedings of the forth meeting of symposium on new magneto-science. 146-151 (2001)
• [文献書誌] H.Uetake, N.Hirota, Y.Ikezoe, J.Nakagawa, K.Kitazawa: "Magnetic fields to control convection"Magnetohydrodynamics. Vol.37. 103-111 (2001)
• [文献書誌] Y.Ikezoe, T.Kaihatsu, S.Sakae, H.Uetake, N.Hirota, K.Kitazawa: "Separation of feeble magnetic particles with magneto-Archimedes levitation"Energy conversion and management. Vol.43. 417-425 (2002)
• [文献書誌] K.Kitazawa, N.Hirota, Y.Ikezoe, H.Uetake, T.Kaihatsu, T.Takaama: "Magneto-convection processes observed in non-magnetic liquid-gas systems"RIKEN Review. Vo.44. 156-158 (2002)
• [文献書誌] N.Hirota, Y.Ikezoe, H.Uetake, T.Kaihatsu, T.Takayama, K.Kitazawa: "Magneto-Archimedes Levitation and Its Application"RIKEN Review. Vol.44. 159-161 (2002)
• [文献書誌] T.Takayama, Y.Ikezoe, T.Kaihatsu, H.Uetake, N.Hirota, K.Kitazawa: "Alignments of feeble magnetic particles under high magnetic fields"Transactions of materials research society of Japan. (in press). (2002)