研究概要 |
本年度は,室温での45MHzから50GHzまでの広帯域周波数掃引測定系の構築に取り組んだ.その結果,5GHz以下の周波数領域では試料によらずほぼ平坦な周波数特性が得られたが,10GHz以上では試料の特性や電極形状に依存して共鳴やリップルなどの構造が存在することが分かった.これにより,低周波数側(50kHzから3GHzまで)の測定系に関しては,コネクタ部分を変換するアダプタを挿入するだけで測定系が構築できる見通しを得た.更なる高周波化には試料接続部の再現性向上が重要である.また,低温環境下でも測定できるように自作の較正用標準試料を作製した.特に,低温でも抵抗がほとんど変化しないニクロム薄膜を用いた標準ロード試料を作製し,50GHz領域まで|S_<11>|<-1OdBとなることを確認した. 次に,銅酸化物における金属絶縁体転移近傍の振舞いを調べるために,擬一次元系のSr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>の複素電気伝導度の周波数依存性を従来の空洞共振器法で詳細に調べた.また,現在の周波数掃引測定では擬二次元系物質の方が解析が容易なため,La_<2-x>Sr_xCuO_4(x=0およびx=0.15)単結晶も新たに作製した.ラウエX線写真や直流抵抗率測定および磁化率測定から良質な単結晶が得られていることを確認し,上記の周波数掃引測定を室温で行った.自作の標準試料を用いて測定結果を較正し,複素電気伝導度を求めた結果,La_2CuO_4などの絶縁体測定では,直流抵抗測定とほぼ一致する結果が得られたが、La_<2-x>Sr_xCuO_4(x=0.15)などの金属測定では薄膜化による高抵抗化が測定精度向上のために必要なことが分かった.今後,低温での測定,Sr濃度を変えた試料によるMI転移近傍の振舞いの変化,を中心に研究を進めていく予定である.
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