欠損性ウルツ鉱構造を有するγ-In_2Se_3は、禁制帯幅が約1.9eVの直接遷移形半導体であり、タンデム型太陽電池のトップセル用材料として適している。また、我々はこれまでにγ-In_2Se_3のエピタキシャル成長に成功し、強い励起子発光を示すなど優れた光学的特性を示すことを明らかにしてきた。このことから、太陽電池の光吸収層としても優れた特性を有すると期待できる。そこで本研究では、MBE法によりIn_2se_3多結晶薄膜を作製作し、評価を行った。 In_2Se_3多結晶薄膜はVI/III化を10としてガラス基板上に1時間製膜した。製膜温度は200〜500℃の範囲で変化させた。膜厚は約1.2μmである。製膜温度が300℃以下ではほとんどピークが観測されなかったが、400℃以上では明確にピークが観測された。またPL測定を行ったところ、400℃以上でγ-In_2Se_3からの発光が観測された。以上の結果より、高品質な多結晶膜を得るためには400℃以上の製膜温度が必要であることが明らかとなった。しかし、層状構造を有するα-In_2Se_3の回折ピークが観測されている。また、光導電率スペクトルを測定したところ、約1.4eV付近に吸収端が観測された。α-In_2Se_3の禁制帯幅は約1.4eVと報告されていることから、作製した膜にはα-In_2Se_3がかなり含まれていると考えられる。α-In_2Se_3は禁制帯幅は約1.4eVと小さいため、In_2Se_3多結晶薄膜をトップセル用材料として用いるためには、製膜条件の制御等によりα相の形成を抑制する必要がある。
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