本研究は分子エレクトロニクスデバイスの開発を念頭に置いて有機分子の、特にナノスケールでの、構造・配向制御と機能発現を目的としている。本年度は、π共役系チオフェンオリゴマー、(チオフェン-フェニレン)コオリゴマーの配列層状成長条件を最適化すると共に、有機電界効果トランジスターによる電子物性評価やナノスケール表面電位観測を行い、有機導電機構や金属/有機物界面での電子状態について検討した。 試料としてメチル終端チオフェン5量体(DM5T)、フェニル終端チオフェン3量体(P3T)を用い、真空蒸着法による配列層状成長膜の作製を試みた。作成した超薄膜の表面形状を走査型原子間力顕微鏡(AFM)、構造・配向性を全反射X線回折装置(TXRD)により観測した。その結果、DM5T、P3T共に薄膜作製時の基板温度、基板種類により膜成長モードが変化し、特にSiO_2/Si基板上、基板温度60-80度とすることにより配列単層膜の作製が可能であることが分かった。そこで、SiO_2/Si上にギャップ幅2-25ミクロンの櫛形電極を作製し、有機電界効果トランジスターを用いたキャリア移動度の測定を行った。High Dope Siから電圧を印可するバックゲート型の有機FET構造において、ゲート電圧増加に対してソースードレイン電流は増加傾向を示し、かつ飽和特性特性を示した。本結果よりDM5T、P3TはP型半導体特性を示し、その移動度が10^<-2>〜10^<-4>cm^2/Vであることが分かった。また、現段階でキャリア移動度の層数依存性はなく、また表面電位測定から一層目と二層目とで電位変化が観測されるものの、二層目以降ではその変化が少ないことから、有機FETにおいては、ゲート酸化膜と有機膜との界面となる第一層目がFET動作の重要な役割を担っていることが分かった。
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