ダイヤモンド薄膜の作製は主に化学気相成長法を用いて研究されているが、レーザーアブレーション(PLD)法では高純度膜を低温で成長できる可能性があり興味深い。以前の研究で、酸素雰囲気中におけるグラフアイトターゲットを用いたレーザーアブレーション法により、ダイヤモンド薄膜をホモ成長出来た。今回、基板温度に対する生成膜の構造変化を調べることでダイヤモンド薄膜成長過程に関する考察を行い、またヘテロ成長を試みた。基板温度が450℃の時、アモルファスカーボンが生成し、基板温度500℃のときはアモルファスカーボンとダイヤモンドの混相膜が、550〜600℃のときはFig.1に示すようにダイヤモンドの単相膜が生成した。さらに基板温度を上昇させると、ダイヤモンド結晶粒の間にアモルファスカーボンが生成し始めた。以上の結果をもとに各基板温度における膜成長過程を次のように考察できる。基板温度が450℃のときは基板からの熱エネルギーの供給が不足し、基板到達粒子がダイヤモンドが成長するための十分な表面移動度を得られないためアモルファスカーボンが生成する。500℃になると、基板到達粒子に十分な表面移動度を有したものが現れ始め、アモルファスカーボン膜中にダイヤモンド結晶が成長する。550〜600℃では、多くの粒子が十分な表面移動度をもちダイヤモンド結晶が形成される。アモルファスカーボンも形成されると考えられるが少量で、酸素の選択的エッチング効果により除去されてしまう。その結果ダイヤモンド単相膜が生成する。基板温度650℃以上では、基板到達粒子の表面移動度が高まりすぎて、熱平衡相であるグラファイトライクなカーボンが生成し始める。
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