本研究により構築した精密三軸ピエゾプローブシステムの駆動特性を調べたとともに、本システムを用いた強磁性薄膜の微細加工技術について以下の成果を得た。 1)作製した三軸ピエゾプローブシステムの駆動特性を調べるため、機械研磨により先鋭化したCoプローブをnmオーダの分解能で空間走査しながら、ガラス基板上に作製したAMRセンサーを用いてその漏洩磁界分布を測定した。その結果、Coプローブ先端を中心とする同心円状の等磁位曲線が観察され、50μmの移動範囲でピエゾアクチュエータの線形動作特性を確認した。 2)電界研磨により先端半径が1μm以下に先鋭化されたPt-IrプローブをCo(50nm)薄膜表面から約10nm程度にまで近接させた後、幅20ns〜10μsのパルス電圧Vを両端に印加し電界蒸発による強磁性薄膜の微細加工を試みた。ただし、プローブ側を正極とした。原子間力顕微鏡を用いて観察した結果、V>5.0Vでは直径5.0μm程度のクレーター型のアンチドットを、2.0V<V<5.0Vの電圧範囲ではCo薄膜上に直径0.9μm、高さ100nmの円形ドットをそれぞれ形成することに成功した。 3)1)と同様なPt-IrプローブをCo薄膜表面に点接触させた後、接合部にパルス電流(最大1.0A)を印加しエレクトロマイグレーションによる原子移動を利用した微細加工を試みた。プローブ先端径程度(1μm^2)の接合面積を仮定すると、接合部での電流密度はエレクトロマイグレーション条件(1.0×10^8A/cm^2)よりも十分大きい。しかし、この方法ではプローブ先端形状の変形は見られたものの、Co薄膜上にドットまたはアンチドットは形成されなかった。電界研磨条件の最適化によるプローブのさらなる先鋭化や、点接触材料依存性などを詳しく調べることにより、本方法による強磁性薄膜の極微細加工技術を確立できると考えられる。
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