研究概要 |
本研究の目的は、2次の非線形電気感受率χ^<(2)>テンソル成分における微視的な局所場効果を考慮して基板の表面状態とその上に吸着した液晶単分子層の表面密度と液晶分子の配向分布との関連を明らかにすることである。平成13年度は以下に示すように、実験試料の準備と液晶単分子層の光第2次高調波測定と液晶セルの配向観察を行いデータ収集を開始した。 (1)実験試料の準備 基板として近赤外域から紫外領域で透明な無水合成石英平行平面基板を選定した。洗浄方法による石英基板表面の状態を規定するために、洗浄剤のpHを変えて石英基板を洗浄した。洗浄剤のpHはpHメーターで実測し、pH=3.0(酸性)、pH=6.8(中性)、pH=12.2(アルカリ性)とした。これらの基板表面に液晶分子を吸着させて実験試料とした。液晶分子として、分子構造が既知であるサーモトロピック液晶(5CB,7CB)を使用した。 (2)液晶単分子層の光第2次高調波測定と液晶セルの配向観察 液晶単分子層から発生する第2次高調波(SH)光の強度は液晶単分子層の2次の非線形電気感受率の2乗|χ^<(2)>|^2に比例する。このχ^<(2)>は液晶分子の表面密度と液晶分子・基板間の微視的な局所場効果と液晶分子の配向分布の関数となる。液晶分子の配向分布は基板表面の状態を反映する。液晶単分子層から発生するSH光を基本光の偏光角及び試料の回転角の関数として測定した。液晶単分子層から発生したSH光強度は洗浄剤のpHの増加に伴い減少した。これは基板表面に吸着した液晶単分子層の分子配向が変化しているのか、あるいは表面密度が変化していることを示唆している。基板表面に吸着した液晶分子の微視的な配向状態が液晶バルクの巨視的な配向に及ぼす影響を調べるために、液晶セルを作製した。液晶セルを作製する際に流動配向等の影響を防ぐために、ホットプレートを使用してセル及び液晶分子を等方相温度に保って、セルに液晶分子を注入した。液晶セル中の液晶バルクの巨視的な配向状態を偏光顕微鏡で観察して評価した。液晶セル中の液晶バルクの巨視的な配向状態を定量的に評価するために赤外吸収スペクトルの偏光依存性を測定した。
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