本研究ではSTM-バリアハイトイメージングでシリコン表面のsub surfaceに存在しているドーパントを検出することを目的とした。通常、シリコン清浄表面は超高真空中での加熱によって作成するが、この場合表面のドーパントが偏析、あるいは表面から脱離してしまう恐れがある。また、清浄表面では表面に存在する結合相手の無い結合(ダングリングボンド)により、フェルミレベルがピンニングされている場合が多く、この場合sub-surfaceのドーパントの影響を捉えることは困難になるものと予想される。このことから本研究では試料加熱を一切行わず、試料を平坦化できるウェットエッチングによる水素終端表面を作成し、バリアハイトイメージングにより、Sub-surfaceのドーパントの影響を検出することを目的としている。水素終端面では大きな表面状態が存在しないため、フェルミレベルのピンニングを避けて実験を行うことができる。 平成13年度は、高ドープのシリコンウエハーの水素終端化を試みた。STMの走査範囲は数十nm×数十nm程度が標準であり、この範囲にドーパントを見出すためには、高ドープの試料が必要である。本年度は比抵抗が0.001ΩcmのAsドープ程度の試料を用い水素終端表面を作成した。STM観察の結果表面には特徴的な三角形のエッチピットが観測され、一部原子分解能での測定も可能であったが全般に欠陥が多く、表面下のドーパントを観測するには至っていない。現在のところ標準的なエッチングプロセスを採用しているが、一つの可能性として、エッチング過程がドーパント濃度に大きく依存している可能性もあり、現在、エッチング条件の確立を急いでいる。また、本年度はAu再構成表面でのバリアハイトイメージングも試み、表面の歪に関連した、バリアハイト変化を検出することに成功し、バリアハイトイメージングによって表面の電荷移動の様子を捉えられることを確認した。
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