研究を行うにあたって、電子顕微鏡の中に組み込むAFMホルダーの設計を電子顕微鏡メーカーの技術者と打ち合わせを行った。最大の問題点は、電子顕微鏡内の作業スペースが非常に狭いことであった。電子顕微鏡の対物レンズにあたるポールピースの間隔が数mmで、試料ホルダーの円筒の直径も1cm弱というのが現有している超高真空電子顕微鏡の仕様である。このポールピースの隙間に試料とカンチレバーを詰め込み、試料粗動機構なければならなかった。試作的な装置になるので、各部品に分けて購入し、それぞれの部品のテストを行った。まずカンチレバーは、電極としてガラス板に金属が蒸着されている部分が試料ホルダーよりはみ出るので、ガラスの部分を切断することにより試料ホルダーの円筒内に納めた。試料粗動機構は、2台のナノモーターを用いることで、粗動機構と試料-カンチレバーの高さ位置調整を同時に行えるよう工夫した。ナノモーターの制御は、メーカーオプションのコントローラーを用いることとして、パソコンとともに購入した。微動のためのスキャナーは、小さくても移動量を確保するため積層型の圧電素子を用いることとした。微動のためのコントローラーは自作し、信号取り込みと制御用のアナログ-デジタル変換ボードを購入して粗動制御用のパソコンに組み込んだ。それらを組み立てた試作の試料ホルダーを超高真空電子顕微鏡に組み込もうとしたが、作製したホルダーが試料の汚染防止用に設置されている液体ヘリウムトラップと干渉したり、鏡筒内を排気しているターボ分子ポンプや電子顕微鏡像を写真撮影するときのフィルム送り機構から機械的振動が入るなど、実際に稼動させるためには解決しなければならない問題に直面し、今年度は有意義なデーターを得ることはできなかった。
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