研究概要 |
[序]気相水素原子により誘起されるシリコン表面上での吸着水素の脱離反応は、プラズマCVD法によるシリコン結晶やアモルファスシリコン膜の成長過程において重要であることがわかっている。そこで、本研究では、シリコンの骨格構造変化が抑制される酸素吸着シリコン表面上での水素脱離反応を詳細に調べ、その脱離機構について考察した。 [実験]サンプルとなるsi(100)表面は2×10^<-10>Torrの超高真空にある反応室内に保持した。そのシリコン表面に表面温度503Kで0原子を0.11ML、続いてD原子を0.3ML、si表面に照射した。さらに、この表面に気相から水素原子を照射し,表面より脱離してくるHD及びD_2分子を質量分析計により観測した。 [結果及び考察] (1)Eley-Rideal(ER)機構によるHD生成 清浄シリコン表面と酸素吸着シリコン表面においてHD生成速度の時間変化を測定した。その減衰の速さから反応断面積を求めると、ER反応しか起こらない表面温度300Kにおいては、両表面での反応断面積はほとんど変わらず(〜2.3Å^2)、ERによるHD生成には、吸着酸素はほとんど影響を与えないことがわかった。このことは、ER反応においては、シリコンの骨格構造変化は重要な因子ではなく、反応に直接的に関与するH, D, Siの局所構造だけで決まってしまうことを意味している。 (2)Collision-induced desorption(CID)機構によるD_2脱離 清浄表面では表面温度500K付近からD_2生成がみられるのに対し、酸素吸着表面では630Kでようやくその生成が認めれる。このことは、その反応次数から提唱されている、シリコン表面の骨格構造変化を伴うdideuteride(SiH_2)の表面伝搬過程がD_2生成を主に支配していることのさらなる証拠といえる。
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