3次元的動態・形態の観測を可能とした共焦点レーザ顕微鏡は、医学・生物学等諸分野における日常的ツールとして広く用いられるようになった。しかし、既存のレーザ共焦点顕微鏡は、原則として走査機構を採用しており、このため1秒間に最大30フレームの処理が限界であり、微生物のように高速に運動する対象の形態や高速な生体反応・化学反応をリアルタイムで解析し、制御することは困難である。一方で、近年の集積化光デバイスの進展は目覚しく、2次元アレイ状の並列で高密度な光源や受光素子が実現されており、これらをレーザ顕微鏡に応用すれば、並列データ取得機能・処理機能など様々なメリットが生まれて来る。しかし、面発光レーザアレイに代表される新規光デバイスの導入や並列処理構造の利用など、従来のレーザ顕微鏡システムには全く存在しない特性を考慮する必要がある。そこで本研究ではまず、面発光レーザアレイや受光素子アレイをレーザ顕微鏡システムに応用する際の基本的課題として、全体システムを従来の顕微鏡と同等の機械的安定性を持って操作可能とするための検討に着手した。また、本研究におけるシステムでは、受光素子で取得されたデータは、各々の素子に直結した集積回路(スマートピクセルと呼ばれる)で処理、あるいはチップ上のメモリに格納される。すなわち、顕微鏡像の取得直後の処理が可能になる。そこで、こうした並列構造に依拠した新しいアルゴリズムの開発に着手した。
|