スメクチック層回転現象を用いた光書込み型の基礎的実験を行った。試料としては、カイラルスメクチック液晶の一種である強誘電性液晶を用い、市販されているチッソ株式会社CS-1024を選択した。 空間光変調素子への応用を考えた場合、部分的にスメクチック層構造の回転を生じさせることが重要である。部分的な層回転現象の誘起方法としては、マトリックス電極により液晶素子の一部のみに電界を印加する方法も考えられるが、本実験では光書込み型での実現を目指した。 光書込み方式の実現にあたり、まず、スメクチック層回転の温度依存性について調べた。その結果、カイラルスメクチックC(SmC*)相から温度を上昇させスメクチックA(SmA)相にすると、急激に層の回転率(非対称電圧波形を1パルス印加したときの層の回転角)が減少することがわかった。 そこで、素子温度は液晶がSmC*相を示す値とし、素子の一部にレーザ照射を行い、部分的にSmA相へと転移させる方法を提案した。レーザ照射中に非対称電圧波形を印加すると、SmC*相を示している領域(非照射領域)のスメクチック層構造は大きく回転し、SmA相であるレーザ照射領域は層の回転は生じないこととなる。その結果、レーザの照射パターンが、スメクチック層構造の配列パターンとして素子に記録される。 上記の提案した方法を試みるため、試料としては、レーザの吸収効率を増加させる目的で色素を混合したCS-1024を用いた。非対称波形としてはノコギリ波を用いた。実験を行った結果、実際に照射パターンに対応したスメクチック層配列パターンが記録できることが見い出された。また、スメクチック層の回転方向は、印加する非対称波形の極性を反転させると逆転する。そこで、パターン記録時とは極性が逆の非対称波形を用いることにより、書込みパターンの消去が可能であることも実証した。
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