本研究のテーマは、透過型回折格子を用いることでフェムト秒レーザーを複数の光束に分離し、さらにレンズを用いることで複数光束が干渉する光学系を構成し、これを用いてレーザーアブレーション加工を行うことによる波長オーダー2次元周期構造の一括作製法を開発する事である。本年度の主要な結果を列挙する。 1.透過型回折格子、アクロマティックレンズ及びシリンドリカルレンズを用い、2光束を干渉させレーザーアブレーション加工する装置を構成した。 2.BBO結晶を用いることでオートコリレーターを構成し、2光束のオプティカルディレイが生じないことを確認した。これは、従来のビームスプリッターを用いた系と比較して、非常に大きな利点である。 3.ポリスチレン、金薄膜(石英基板上に蒸着)、サファイア、スライドガラスなどを試料に用いて実際にレーザーアブレーション加工を行い、全ての試料において約6μm周期のドット列を加工することに成功した。 4.加工形状を超高倍率光学顕微鏡及び電子顕微鏡で観察し、ショット数に対する変化を調べた。サファイアを試料に用いた場合、1ショットでは加工できなかったが、5ショットで格子定数レベルの加工深さを得た。面方向のサイズは1.6×4.3μm^2であった。また、ドット列の加工長さとして約4mmを得た。ショット数を増やすに従って加工形状が深くなり、また周辺に微粒子状構造物が堆積した。一方、サファイア以外の試料では、全て1ショットでドット列の作製に成功した。 5.金薄膜を加工した物に半導体レーザーを入射したところ、反射及び透過光共に回折光を観測した。これにより、加工形状が透過型及び反射型回折格子として動作することを確認した。
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