研究概要 |
私は,日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業「計算科学」プロジェクトの一つである「地球規模流動現象解明のための計算科学-数理・物理モデルと計算アルゴリズムの開発(研究代表者 : 金田行雄)において,開発する乱流モデルの検証を行うため,世界最大規模(格子点数 : 1024の3乗)の乱流の直接数値計算(DNS)を行い,乱流の大規模な基礎データの構築を行った.それは有限な広がりのある慣性小領域を有し,乱流の細かいスケールにおける普遍的な性質を解明する可能性を秘めた貴重なデータである.この乱流の基礎データの有効な共有と公開方法を開発を目指し,本年度は, (1)必要とされるデータの調査, (2)試験的なデータの共有, (3)データの可視化, (4)時系列の動画作成のための技術開発を行った.以下,各々についての研究実績を述べる. (1)世界で初めて512の3乗の乱流のDNSを行った,乱流研究の第一人者の一人であるJimenez教授から, (i)一時刻における速度場の全データ, (ii)LESモデル等の初期条件として使えるもの,の公開が重要であるという経験を伺い,そのことを踏まえ,データ加工に用いる計算機の能力に合った形でデータを用意する方法を確立した. (2)乱流のDNSで得られたデータは差分法の精度を検証するのに非常に有効であることが分かり,実空間における速度場データの共有を試験的に行った. その際,現時点ではネットワークを介したデータの転送より,安価な大容量ハードディスクを用いたほうが効率がよいことが分かった. 最近,研究室ではギガEtherネットワークを導入したため,今後ネットワークを介したデータの共有に向け,転送にかかる時間等の基礎データを取る予定である. (3)上記DNSで得られた乱流場の様々な物理量を可視化し研究発表等で公開した. また, (4)次年度に行う予定の時系列データの可視化(動画作成)が可能であることが分かった.
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