研究概要 |
厚さ数nmの薄膜を積み重ねた多層薄膜が作製されており,磁気ヘッドや薄膜太陽電池などへの応用が期待されており,その機械的特性の評価が重要である.本研究では,量子力学に基づく厳密な解析手法である第一原理分子動力学法を用いて,ナノ多層薄膜の構造および機械的特性を明らかにすることを目的としている. 本年度は,薄膜における原子構造および原子間結合状態の基本的特性を明らかにするため,平面波基底ノルム保存第一原理分子動力学法を用いて,半導体基板材料(シリコン)上への金属原子(アルミニウム)の堆積プロセスシミュレーション,ならびにその付着強度評価のシミュレーションを行った.まずシリコン(001)表面の構造決定を行い,ダイマー列が平行に並びその間に溝状の構造が形成されることを明らかにした.その後アルミニウム原子を堆積させ,溝の部分にアルミニウム原子が入り込むことにより第1層の原子列を形成することを示した.さらに堆積を続行し,アルミニウムの第2層を形成した.第2層堆積後の原子構造および原子間結合状態から,原子間結合(電子構造)はアルミニウムのバルクに近い状態であるが,原子構造はバルクとの違いが大きいことを示した.すなわち,異種材料接合部における原子・電子構造についての重要な知見を得ることができ,今後の多層薄膜構造および強度の解析に結びつける予定である.
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