本年度は、従来の走査型電子顕微鏡(SEM)に若干の装置を付加するだけで構築することが可能で、選択した場所の非破壊・内部観察を行うことが出来る電子線誘起超音波顕微システム(SEAM)の超音波信号検出部の改良を行った。その結果、超音波検出用PZTからの非常に微弱な超音波信号の検出に成功した。さらに、その超音波信号とSEMの走査信号との同期を取ることにより、超音波信号の画像化システムの構築を行った。PZT信号検出装置の改良および画像化システムの構築により、SEAMによる20μmオーダー程度の分解能を有する非破壊・内部観察が可能となった。構築されたSEAMの動作チェックを兼ねて、様々な試料の観察を行った。その結果、試料内部の熱的特性の違いを反映したSEAM像が観察でき、SEAMが正常に動作していることが確認できた。さらに、内部き裂発生試験機として昨年度作製したインデンテーション試験機に変位測定器を付加することで、押込み荷重および押込み深さを同時に測定することが出来るように改良を加えた。その試験機を用いて、ダイヤモンドライクカーボン薄膜の硬度および弾性率の測定を行い、それぞれの値がおよそ20GPaおよび190GPaであることがわかった。また、押込み試験を行った際に破壊形態の検討を加えた結果、ダイヤモンドライクカーボンと基盤であるシリコンとの界面強度が薄膜自体の強度に比べて強く、界面剥離などが生じないことがわかった。この薄膜コーティング材の基材として用いたシリコンの内部き裂の観察をSEAMで行い、内部き裂の同定が可能であることがわかった。
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