研究概要 |
まず,放電加工によって加工面に目的とする組成の被膜を形成できるかについて検討を行った.すなわち,チタンカーバイド硬質被膜の形成を目的とし,電極にチタン電極を用い,電極消耗の大きな加工条件で加工を行った.また,表面粗さの低減を目的とし,灯油系加工液中に炭素粉末を混入して加工を行った場合についても検討した.そして,加工表面の元素分析および組成分析を行った結果,以下の結論を得た. 1.チタン電極を用い,電極消耗の大きい加工条件で加工を行った場合,加士表面にはチタンカーバイドを含有する表面層を形成できる. 2.炭素粉末混入加工液を用いて加工を行った場合,未混入の場合よりも表面粗さの小さいチタンカーバイド含有層を形成できる. 続いて,硬質被膜の最適加工条件を明らかにするためにパルス幅,炭素粉末混入濃度が,表面粗さおよびチタンカーバイド含有層厚さに及ぼす影響について考察した.そして以下の結論を得た. 3.表面粗さは炭素粉末濃度が高いほど小さくなるが,濃度が高すぎると炭素粉末の滞留が起こりやすく加工状態が不安定となりかえって粗さは悪化する. 4.炭素粉末混入濃度を高くすることで,クラック等の表面欠陥のない均一な厚さの被膜層が得られる. 今後,得られた被膜の硬度分布や耐摩耗性について評価し,硬質被膜形成のための最適条件を体系的に解明するとともに,微細形状への適用の可能性を検討する.またシリコンカーバイドやタングステンカーバイドといった硬質被膜形成の可能性についても検討する予定である.
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