研究概要 |
マイクロマシンで代表される微小構造物において,構造材料として単結晶シリコンが多用されている.異方性エッチングなどの加工技術を用いることで,特定結晶面であれば原子オーダでの加工面が得られるが,エッチ速度が20μm/hと非常に遅いという問題がある.また,この加工方法では特定結晶面で構成される形状しか得られないため,製作される構造物の形状は限定されている.そこで,まず,異方性エッチングにおいて,レーザなどによりシリコン表面を光励起することでエッチ速度を増加させる加工法(Laser-Assisted Etching ; LAE)の確立を図った. レーザはエキシマレーザを採用した.エキシマレーザは,フォトンにより原子結合を切断(アブレーション)により試料を加工するため,試料に熱損傷を与えずレーザ照射部のみ加工されるという特徴を有している.そこでエキシマレーザの加工エネルギをインプロセスで計測し,フォトンエネルギと加工速度の関係を調べた. まず,エネルギ密度と加工速度/形状との関係を調べた.エネルギ密度を大きくすると加工速度は増大する傾向にあるが,エネルギ密度を大きくしすぎると加工面から発生する気泡のためにレーザ光が遮蔽されてしまい,加工能率が極端に低下することが分かった.また,エネルギ密度が大きいケースでは,加工面の粗さが大きくなるた,加工目的によりエネルギ密度の調節が必要となる.次に,レーザの繰り返し周波数させ,単位時間当たりにおけるレーザ加工とエッチングの作用の割合が加工速度/形状に及ぼす影響を調べた.この結果,加工速度はレーザの繰り返し周波数に比例して大きくなることが分かった.しかし,この場合も,レーザの繰り返し周波数が大きくなると,単位時間あたりにシリコン表面に与えられるエネルギも増大することから,加工面で気泡が生じレーザ光の遮蔽により加工速度の低下を引き起こす. LAEでは,異方性エッチングにおける化学エネルギとエキシマレーザにおけるフォトンエネルギの比を考慮すると効果的な加工ができることが明らかになった.次年度はこれを利用して,単結晶シリコンの加工形状の多自由度化を図る.
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