研究概要 |
飲用容器や各種筐体として利用される容器状製品は,深絞り加工により製作される.成形限界としてポンチ肩部で破断に至るα破断が挙げられる.この破断を抑制するため,数工程の深絞り加工を繰り返す再絞り加工が一般的に実施されているが,コストや生産性の観点から問題点が多い.本研究ではα破断を回避するため底部の圧縮加工と深絞り加工を組み合わせた複合深絞り法を提案し,成形性を向上させる最適加工条件を導出することが目的である. 本年度は圧縮加工を実施する方法として,1)荷重一定負荷,2)ストローク制御負荷,3)ピンポイント負荷の3種類提案し,最も成形性が向上する加工パターンを確立することを目的に研究を進めてきた.穴径の異なるダイスを本補助金で購入し,現有の複合深絞り実験装置に組み込んだ.複合成形における加工条件因子の関係を詳細に調査するため,それぞれの負荷方法において,絞り比,しごき率,圧縮荷重等を変化させ成形実験を実施した. その結果として,底部の板厚は荷重一定負荷では25%,ストローク制御負荷では40%,ピンポイント負荷では60%の薄肉化が可能であり,肩部における板厚減少を解消し容器深さも増大することから底部から側壁部への材料流動が発生していることが確認できた.また,ピンポイント負荷において加工条件因子の組み合わせを総合的に評価するパラメータを提案し,これにより成形限界の予測がある程度可能となった.これらの研究成果は塑性加工学会にて発表する予定であり,現在参加準備中である. しかし底部の薄肉化による材料流動がどのように発生し,肩部へ充当されるのか数値的な検討をする必要があり,次年度に取り組んでいきたい.
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