研究概要 |
深穴加工においては切くずの排出が困難となるために高圧多量の切削油を用いた方法が主に用いられている.特に,穴深さ/穴径が大きい場合にはBTA方式の加工法が多用される.切削油を多量に使用することから,工具寿命においてもよい結果を与えることは明白である.しかし,ここ数年,地球規模で環境問題に対する取り組みが開始され,機械加工分野における切削油に関しても使用を極力低減させることが試みられ始めている.近い将来必ず,深穴加工においても多量の切削油を用いない加工方法を確立することは避けられない..そこで高圧多量の切削油を使用する代わりに空気流による切くず排出法を考案し,環境保全対策のためのセミドライBTA方式深穴加工法の実用化の指針を得ることを目的として研究を遂行している.本年度はBTA力式工具を用いた深穴加工法におけるセミドライ化への基礎実験として,ボーリング加工における深穴加工において,切りくず排出に空気流を用いたシステムを構築した.空気吸引式において切くずをスムーズに排出できる切くず形状を検討し,切くず寸法および形状を決定した.さらに,理想的切くずを発生させるような切れ刃形状(チップブレーカ形状等)および切削条件を検討し,加工実験において,ほぼ理想的な形状を得ることができ,ボーリング加工法における空気流を用いた鋼材および延性が高いアルミ材の加工における切りくず排出が可能であることを示した.さらにセミドライ化において問題となる工具寿命に関して,切削油の種類および供給量を変え,その傾向について分析し,工具材種による切れ刃および案内パッドの寿命への影響を明らかにすることも試みた.BAT方式工具では案内パッドの寿命延長が最大の問題となり,パッドの効率的な潤滑が工具寿命延長のポイントになることを受け,効率的に切削油の性能を引き出すためのミスト化を含めた方法も提案した.さらに,加工時の温度変化の観察に加え,加工面粗さ,穴径などの測定を行い,併せて加工精度の比較検討も行い,BTA方式工具における深穴加工法のセミドライ化への実現のための指針を得ることができ,実用化への第1歩を示した.
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