研究概要 |
本年度では,ガス浸炭・ラジカル窒化処理をクロムモリブデン鋼(SCM415H)歯車に適用するための基礎的研究として,ラジカル窒化法により表面改質を施した高炭素クロム軸受鋼球(SUJ2)について,曽田式四球試験機を使用し,油浴潤滑条件下で焼付き試験を行った.特に,焼付き強さに及ぼすラジカル窒化処理の影響,回転球および固定球のいずれか一方を窒化処理球とした試験球の組合せ対する焼付き強さの相違などについて検討した結果,以下のことが明らかになった. (1)ラジカル窒化処理を施した試験球の表面粗さは約0.2μmR_yであり,未処理球の場合(約0.1μmR_y)と比較して僅かに増加する. (2)ラジカル窒化処理を施した試験球の表面上のマイクロビッカース硬さは約1050HVであり,未処理球の場合(約900HV)と比較して上昇する.しかしながら,表面より20μm以上の内部におけるラジカル窒化処理を施した試験球のマイクロビッカース硬さは,窒化処理温度(480℃)による焼戻しの影響により,未処理球の場合と比較して約300HV低い. (3)回転球および固定球にラジカル窒化処理を施した場合の焼付き荷重は,未処理球向士の場合の約2.6倍となり,ラジカル窒化処理はクロムの含有量の少ないSUJ2鋼の場合においても焼付き強さの向上に効果的である. (4)回転球側のみラジカル窒化処理を施した場合の焼付き荷重は,固定球側のみラジカル窒化処理を施した場合の約3.3倍となり,試験球の組み合わせは極めて重要である. (5)焼付きを生じる直前における摩擦係数は,回転球側のみラジカル窒化処理を施した場合が最も小さく,約0.07となる.
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