研究概要 |
パルスデトネーションエンジン(PDE)は,これまでのジェットエンジンの構造と大きく異なり,エンジン筒内に燃料と酸化剤をパルス状に噴射させる.そこで,混合気を着火しデトネーション波を発生させ,短時間のうちに燃焼させることにより高温・高圧気体を生成させ,既燃気体をノズルによって噴射し推力を得るのが基本原理である.しかしながら,PDEはまだ構想あるいは試験段階にあり,実用化するには至っていない.そこで,申請者はPDEの開発に必要な基礎データを得ることを研究目的とした.具体的には以下の4課題を明らかにすることが研究目標である.(i)燃料をパルス状に噴射させ酸化剤と短時間のうちに混合させる,(ii)混合気の点火で発生させたデフラグレーション波を短い距離でデトネーション波に遷移させる(DDT過程),(iii)デトネーション波の伝ぱにより燃焼した既燃気体を高速で噴射させるとともに排気する,(iv)これら1サイクルの周期を短くする.申請者は,これらの課題を克服することを目的とし,特に(ii)デフラグレーション波からデトネーション波への遷移過程を明らかにすることを今年度の研究計画とした. 研究の初年度においては,まずPDEを試作して実験を行った結果,以下の知見が得られた. (1)燃焼管内に直接噴射された水素と空気のDDT過程について,噴射方法,点火プラグと噴射弁の位置関係,点火時刻の影響を明らかにした. (2)燃料と酸化剤の衝突による乱れが,DDTおよび混合の促進に影響を与えることが確認され,対向型噴射で初期圧の14倍程度の圧力が得られたが,同時に噴射弁の数による混合気の不均一性の影響も確認された. (3)連続サイクルで運転する実験装置を構築し,単サイクル実験,連続サイクル実験の両者を比較した.連続サイクルでは,作動周波数で10Hzまで,その作動を確認した.
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