研究概要 |
ミクロンオーダーの規則的な凹凸形状を表面構造に持つ流路壁面で,流動抵抗の低減を実現するための基礎研究として,本年度は表面近傍の状態や流れの計測および表面状態をモデル化した数値計算を行った. 実験は,矩形断面を持つ管路を製作し管壁の一部を数種の試験面で構成し層流域における圧力損失の測定を行った.試験面には平滑なシリコン,フォトリソグラフィ・DRIEなどの微細加工技術によりミクロンオーダの突起を作成したシリコンを用い,微細凹凸の有無や表面へのはっ水性塗料塗布の有無を条件として管摩擦係数の比較を行った. また,圧力・流量および流体の残存空気量を調整できる流路を製作し,水中における微細凹凸面の顕微鏡観察を行った.その結果,常圧・無流動・空気飽和水を条件とした観測では表面の凹部に気体層が存在することが明らかになった.条件の変化により表面が全面的に水で覆われるようになる場合は,まず局所的に水が浸漬し,徐々にその領域が広がっていく様子が観測された. 数値計算では表面の凹部が空気層で満たされているものと仮定し,固体表面から数ミクロンの領域において凹凸パターンを種々に変えながら,気液の流れを有限体積法により解析した.その結果固液および気液の複合界面をマクロに見た境界と見なしたときにこの境界上で有限の速度(すべり速度)が生じ,速度勾配が減少するために流動抵抗が低減されることが示された.また,すべり速度はずり速度(速度勾配)に比例し,その比例定数は仮定された微細凹凸パターンに対し一定の値を持つことを示した.
|