本研究課題に関して以下の成果を得た。 1)音場と流れ場を分離した低マッハ数流れ場の直接解法により、壁乱流場からの放射音の計算をすすめてきたが、さらに音源全周囲に放射条件を課したより妥当なシミュレーションを行った。その結果、周期性を仮定した場合と比べ、放射音の干渉が弱まり、特定の場所から強く音が放射されていることが観察された。同時に周期条件を課した場合、音源の干渉が強すぎるため特異な放射音場パターンが形成され、境界条件の設定は慎重に行われなければならないことが明らかにされた。 2)乱流音の発生機構を要素還兀化して考えるため、線形統計評価法により壁近傍場で統計的に抽出された渦対を時間発展させた際の放射音の計算を行った。強い要素渦の発達段階においては、徐々に放射音が強くなるわけではなく、ヘッド部が急成長する際にとくに強い放射音が発生することをすでに確認していたが、強い放射音の要因はこのヘッド部付近での強い吹き上げ・吹き下ろしによって生じる圧力の空間分布が短時間に著しく変化することによるものであることが明らかにされた。 3)高マッハ流れ場における音場の基本的な特性を評価するために、超音速溝乱流場の直接数値シミュレーションを行った。同程度のレイノルズ数の非圧縮流れ場と比べて、壁近傍では渦の発生が弱まり、溝幅で定義される大規模スケールが活性化することで壁向きの吹き降ろしが強くなり、その結果、渦は壁近傍から遠方まで間欠的な様子を示すこと、渦度の生成率分布を調べた結果、渦度生成率は減少するが特に壁近傍の非常に薄い層ではbaroclinic効果が強く作用することを明らかにした。
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